- 人工授精(AIH)とは
- 人工授精(AIH)が適している方
- 人工授精(AIH)の手順
- 人工授精(AIH)の成功率と影響要因
- 人工授精(AIH)のメリット・デメリット
- 人工授精(AIH)に関するよくある質問
人工授精(AIH)とは

自然妊娠では、精子が膣から子宮に到達する必要がありますが、人工授精では精子を直接子宮に届けるため、精子と卵子が出会いやすくなります。
「人工」という名称がついていますが、精子の注入までは医師が手を加えるものの、その後の受精や妊娠のプロセスは自然妊娠と変わりません。
人工授精は、身体への負担が少ない治療法の一つです。また、保険適用の範囲内で行えるため、費用も比較的抑えられます。気になる点や不安があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
人工授精(AIH)が適している方
タイミング法を行ったが
妊娠に至らなかったご夫婦
タイミング法を6カ月間行ったものの妊娠に至らなかった場合、次のステップとして人工授精を選択されるご夫婦が多いです。人工授精は、タイミング法に続く自然妊娠に近い治療法として有効です。
軽度の男性不妊の方
運動精子の数が少ないなど、軽度の男性不妊が確認された場合、人工授精が適応となります。精子を洗浄・濃縮して子宮内に届けることで、妊娠の可能性を高めます。
ヒューナーテストに
合格しなかったご夫婦
頸管粘液が少ない、または粘液と精子の相性が悪い場合、人工授精によって妊娠率の向上が期待できます。
その他
以下のような状況でも人工授精が適応となる場合があります:
- 年齢を考慮し、早期の妊娠を希望される方
- 性交障害や膣内射精障害がある方
- 子宮筋腫や子宮内膜症がある方
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値が低い方
人工授精が適しているかどうかは、検査結果や患者さまのご希望に基づいて判断します。気になることや不安があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
人工授精(AIH)の手順
人工授精は、以下のステップで進められます。治療の内容を事前に理解していただくことで、安心して取り組むことができます。
1診察・検査
医師による診察とともに、超音波検査・頸管粘液検査・尿検査(尿中LHの測定)を行います。
超音波検査 | 卵胞の大きさや子宮内膜の厚みを調べ、排卵日を予測します。 |
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頸管粘液検査 | 粘液の量や性状を測定し、精子の侵入に影響する原因の有無を調べます。 |
尿中LH測定 | LHホルモンが一定の数値に達していれば、治療へと移行します。 |
さらに、排卵日をより正確に予測するために、必要に応じて血液検査を行う場合もあります。
2人工授精
精液採取
ご自宅で精液を採取し、容器に入れて当院までお持ちいただきます。採取の方法や注意点については事前に丁寧にご説明いたしますので、ご安心ください。
人工授精の実施
超音波検査で卵胞の大きさを確認後、洗浄・濃縮した精子を女性の子宮内に注入します。人工授精の処置は約10分で完了し、ほとんど痛みを感じることはありません。安心してリラックスした状態で治療を受けていただけます。
3人工授精翌日以降
排卵障害などがある場合には、必要に応じて超音波で排卵の有無を確認することがあります。また、着床を促進するために黄体ホルモンの補充療法を行う場合もあります。
人工授精(AIH)の
成功率と影響要因

そのため一般的に、女性が40歳以上の場合には、人工授精以外の方法が推奨されます。
人工授精(AIH)の
メリット・デメリット
メリット
人工授精には、以下のようなメリットがあります。
受精以降は自然妊娠と変わらない
精子を子宮に注入する処置は医療の力を借りますが、受精後の経過は自然妊娠と変わりません。より自然に近い形で妊娠を目指せるため、精神的な負担が少ないのも大きなメリットです。
痛み・身体への負担が少ない
やわらかいカテーテルを使用するため、処置中の痛みはほとんどありません。治療時間も5~10分と短く、身体への負担が軽微で済みます。
保険が適用される・比較的費用が抑えられる
健康保険が適用されるため、費用面での負担が軽減されます。
タイミング法よりも
妊娠成功率が高い
人工授精の1回あたりの成功率は5~10%で、タイミング法の約2倍です。
精子を凍結するという
選択肢がある
事前に精液を凍結保存し、人工授精当日に解凍して使用することが可能です。ただし、凍結精子は運動率が50~80%低下する場合があり、そのために十分な運動精子数が確保できない場合もあります。精液の状態によっては凍結使用が難しいケースもございますので、事前に医師とご相談ください。
デメリット
一方で、以下のようなデメリットがあることも把握しておきましょう。
必ず妊娠に至るわけではない
人工授精の成功率は1回あたり5~10%です。必ずしも妊娠が成立するとは限らないため、結果に対する心構えが必要です。
精神的な負担を感じることがある
カテーテルでの精子注入や精液採取(マスターベーション)に抵抗を感じる方もいらっしゃいます。当院では、患者さまが少しでも安心して治療を受けられるよう、丁寧な説明と温かい対応を心がけています。
痛み・出血などの
副作用が起こることがある
カテーテル挿入時の軽い痛みや出血、治療後に高熱や下腹部痛が起こることがあります。これらの副作用を防ぐため、治療後に抗生物質を処方する場合があります。
人工授精(AIH)に関する
よくある質問
人工授精(AIH)は痛いですか?
カテーテルで精子を子宮内に注入する際、ごく軽い痛みを感じる場合があります。ただし、当院ではやわらかいカテーテルを使用し、丁寧に挿入するため、ほとんどの場合、過度な痛みを感じることはありません。
内子宮口(子宮の出口)が狭い方や緊張されている方は、痛みを感じやすいことがありますが、患者さまがリラックスして治療に臨めるよう、丁寧な説明と配慮を徹底しています。不安な点や気になることがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
人工授精(AIH)の処置にかかる時間はどれくらいですか?
人工授精の処置自体にかかる時間は、約10分です。長くても15分以内に終了します。処置後はお身体の状態を確認したうえで、すぐにお帰りいただけます。お忙しい方でもスムーズに受けていただける治療です。
人工授精(AIH)の前日に性交渉をして問題ないですか?
基本的には問題ありません。ただし、男性によっては、前日の射精が原因で、人工授精用に採取する精液中の精子数が減少する場合があります。そのため、精液量や精子数に不安がある場合には、人工授精の前に2~3日の禁欲期間を設けることをおすすめしています。ご不明な点があれば、担当医にお気軽にご相談ください。
人工授精(AIH)をした後にしてはいけないことは?
人工授精後は、基本的に当日から普段の生活に戻ることができます。運動・入浴・性交渉も再開して問題ありません。ただし、発熱や下腹部痛などの症状が出た場合には、当日は安静にしてお過ごしください。症状が強く現れたり、不安な点がある場合には、すぐに当院までご連絡ください。
人工授精(AIH)とFT(卵管鏡下卵管形成術)はどちらがおすすめですか?
人工授精やFTを含む不妊治療には、それぞれ長所や短所、適応があります。一概に「どちらが良い」とは言えず、患者さまの状態や不妊の原因に応じた治療選択が重要です。
以下のような適応に基づいて治療法を選択します:
- 人工授精(AIH):タイミング法で妊娠に至らなかった方、または軽度の男性不妊がある方に適しています。
- FT(卵管鏡下卵管形成術):卵管造影検査で異常が確認された卵管性不妊症の方に有効です。
卵管性不妊症でない場合、一般的にはまずタイミング法、その後に人工授精を検討する流れが推奨されます。最適な治療法については、診察や検査結果に基づき、医師と一緒に決定していきましょう。