慢性子宮内膜炎
子宮内膜炎は、子宮の内側にある「子宮内膜」という粘膜で炎症が起こる病気です。炎症には以下の2種類があります。
急性子宮内膜炎
浅い層(機能層)の炎症。月経により剥離・排出されることで自然治癒が期待できます。
慢性子宮内膜炎
深い層(基底層)まで炎症が広がり持続する状態。月経を経ても自然治癒しないため、早期の診断と治療が必要です。
慢性子宮内膜炎の症状
慢性子宮内膜炎は自覚症状が乏しいものの、以下の症状が現れることがあります。
- 軽度の腹痛
- 性交痛
- 不正出血(少量)
これらの症状がある場合は早めに医師に相談することをお勧めします。
慢性子宮内膜炎の原因
主な原因は以下の通りです。
- 細菌感染(クラミジアや淋菌など)
- 子宮内膜症、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ
- 子宮内異物(避妊具や手術器具など)
- 免疫異常
急性子宮内膜炎が慢性化することもあります。
慢性子宮内膜炎の検査
子宮内膜炎が疑われる場合、主に以下のような検査を行い、診断します。
子宮鏡検査
子宮専用の内視鏡を用いて子宮内膜の状態を観察。炎症の程度を確認できますが、確定診断にはなりません。
CD138検査
慢性子宮内膜炎では、CD138という表面抗原を持つ免疫細胞が特徴的に増加します。この検査では以下の手順を行います。
子宮内膜を少量採取
子宮内の一部の組織を採取します。
CD138細胞の染色
採取した組織を特殊な方法で染色し、CD138細胞を可視化します。
顕微鏡での観察
400倍の視野内で10~20視野を観察し、1~5個以上のCD138細胞が確認された場合、慢性子宮内膜炎と診断します。
この検査は自費診療となりますが、慢性子宮内膜炎の診断において重要な役割を果たします。
子宮内細菌叢検査 (EMMA/ALICE)
子宮内細菌叢、いわゆる「子宮内フローラ」を調べる検査です。子宮内フローラとは、子宮内に存在する細菌の種類やバランスを指します。
この検査では、以下の手順を行います。
- 細い器具を用いて子宮内膜液を採取。
- 採取した液体に含まれる細菌のDNAを専用の機器で分析。
- ラクトバチルス(善玉菌)、常在菌、有害菌の割合を確認。
この検査を通じて、以下のことが可能になります。
- 慢性子宮内膜炎の診断
炎症の原因となる菌の特定ができるため、的確な治療が可能になります。
- 子宮内環境の評価
特に不妊治療を受ける方において、子宮内フローラが妊娠に及ぼす影響を調べるためにも有効です。
善玉菌であるラクトバチルスが十分に存在している場合、子宮内の健康が保たれやすい一方で、有害菌の割合が増えると慢性子宮内膜炎や妊娠の妨げになることがあります。
慢性子宮内膜炎の治療
多くの場合、抗生剤、ラクトフェリン(サプリメント)の内服が行われます。また、ラクトバチルスの膣錠を使用することもあります。
抗生剤治療
細菌感染を抑える目的で抗生剤を内服します。感染の原因となる菌に適応した抗生剤が処方されます。
ラクトフェリン
(サプリメント)や
ラクトバチルス膣錠
善玉菌(ラクトバチルス)を増やし、子宮内の細菌バランスを整えるために使用されます。これにより、子宮内環境を改善し、炎症の軽減を目指します。
慢性子宮内膜炎が治らない場合
抗生剤の変更や繰り返し検査を行い、効果が得られない場合は以下の処置が検討されます。
子宮内膜掻把術
炎症を起こした子宮内膜を掻き取る手術。
子宮鏡下手術
子宮内の異常を直接観察し、治療する手術。
治療の成功には根気強い取り組みが必要です。慢性子宮内膜炎は不妊の原因にもなるため、症状が気になる場合は早めに診察を受けましょう。