卵子凍結とは?
卵子凍結とは、女性の卵巣から採取した卵子を将来的な妊娠に備えて凍結保存する技術です。似た技術として、受精卵を凍結保存する「胚凍結」がありますが、卵子凍結では精子と授精させず、卵子の状態のまま保存します。
凍結した卵子は適切なタイミングで解凍され、顕微授精を経て子宮に移植することで妊娠を目指します。
なぜ卵子凍結をするのか?
女性は、生まれた時点で一生分の卵子を卵巣に持っていますが、男性の精子のように新しく作られることはありません。年齢を重ねるごとに卵子は老化し、妊娠の可能性が低くなります。若い時期の卵子は受精能力が高く妊娠に適していますが、すべての女性が若い時期に妊娠を選択するわけではなく、また、出産後の子育て環境が整っているとも限りません。こうした状況を考慮し、妊娠適齢期に卵子を凍結することで、将来の妊娠に備える選択肢が可能となります。
卵子凍結を検討する具体的なケース
卵子凍結は、将来の妊娠に備えて卵子を良好な状態で保存しておきたいと考える女性に適した選択肢です。具体的には、以下のような状況で検討されることが多いです。
- 仕事や学業が忙しく、現在妊娠が難しいが、将来的に子どもを希望している場合
- キャリア形成に専念したい時期にある場合
- 経済的に安定してから子どもを持ちたいと考えている場合
- 将来、パートナーと妊活を行う備えとして
- がん治療やその他の医療処置で卵巣機能が低下するリスクに備える場合
重要なのは、卵子凍結は必ずしも「将来絶対に子どもが欲しい」と考える女性だけが選ぶ方法ではないという点です。「将来、もしかしたら子どもが欲しくなるかもしれない」といった漠然とした可能性を考え、卵子凍結を選択する女性も少なくありません。
卵子凍結の手順
卵子凍結は以下の手順で進められます。
1初回カウンセリング
卵子凍結に関する詳細な説明や疑問点への回答を行います。また、体調の確認や治療スケジュールについての相談を行い、全体の計画を立てます。
2ホルモン治療
排卵誘発剤(ホルモン薬)を使用し、卵巣内で複数の卵子を同時に成熟させるための治療を行います。この治療は通常約2週間続き、期間中は定期的に超音波検査を行って卵巣の状態や卵子の成長を確認します。
3卵子採取
卵子が成熟したタイミングで、超音波を用いて卵巣から卵子を採取します。採取は局所麻酔または静脈麻酔のもとで行われ、多くの場合は外来での日帰り手術として実施されます。
4卵子凍結
採取した卵子はその場で凍結保存されます。卵子は専用の方法で超低温に保たれ、良好な状態を維持したまま将来使用するまで保存されます。
5凍結卵子の保存
保存された卵子は専用の保存容器に収められ、液体窒素を使用して超低温の環境で長期間保管されます。保存期間中は定期的に管理が行われ、必要に応じて解凍して使用することが可能です。
これらの手順はすべて、専門的な医療チームによって安全かつ適切に進められます。ご不明点があればお気軽にご相談ください。
卵子凍結のリスクと注意点
卵子凍結を検討する際に、リスクや注意点について理解しておくことが重要です。
必ず妊娠できるわけでは
ない
凍結した卵子は、適切なタイミングで解凍し、顕微授精を経て子宮に移植されます。しかし、若い頃の質の良い卵子を使用できたとしても、必ずしも妊娠が成立するわけではありません。これは、他の不妊治療や自然妊娠の場合と同様です。
凍結や融解で卵子が
ダメージを受ける
卵子凍結および将来的な顕微授精には、-196℃の液体窒素による凍結と解凍のプロセスが必要です。この過程で卵子がダメージを受ける可能性があり、凍結せずにその時点で妊娠を試みた場合と比較して、妊娠率が低下することがあります。
卵子凍結と妊娠率の関係
凍結卵子を解凍して顕微授精を行った場合の妊娠率は、年齢や卵子の状態により異なります。以下に解凍後の卵子の生存率や受精率を含めた妊娠率を示します。
35歳までに卵子凍結を
行ったケース
妊娠率:36~61%
融解後卵子の生存率:90~97%
受精率:71~79%
40歳を含めた幅広い年代で卵子凍結を行ったケース
妊娠率:10.8~43.3%
融解後卵子の生存率:68.6~89.7%
受精率:71.7~85.8%
卵子凍結を考える年齢
卵子の質は30歳頃から徐々に低下し、35歳以降で急激に低下するとされています。このため、20代から34歳までの間に卵子を凍結しておくことが、将来的な妊娠率を維持するために効果的と考えられます。
卵子凍結にかかる費用は?
卵子凍結に関連する検査や投薬、保存に関しては保険が適用されず、医療機関によって費用が異なります。当院では、明確な料金体系をご用意しています。不明な点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。
費用
卵子凍結に関する費用は以下の通りです。卵子凍結は保険適用外のため、検査や処置の費用はすべて患者さまの自己負担となります。
項目 | 費用(税込) |
---|---|
卵子凍結 | ¥55,000 |
卵子凍結保存維持(凍結から1年経過後、年1回) | ¥38,500 |
卵子融解 | ¥49,500 |