卵管閉塞とは
卵管は、卵巣から子宮へ卵子を運ぶための重要な通路です。ここで精子と卵子が出会い受精します。
「卵管閉塞」は、この卵管が詰まったり狭くなった状態を指し、不妊症の一因となります。卵子が子宮に到達できないため、妊娠が難しくなる場合があります。
卵管閉塞の症状
卵管閉塞には明確な自覚症状がほとんどありません。
そのため、不妊症の検査で偶然発見されるケースが一般的です。
卵管閉塞の原因
卵管閉塞の原因には以下のようなものがあります。
クラミジア感染症
クラミジア・トラコマチスという病原体が卵管に感染して炎症を引き起こし、これが癒着や閉塞を招くことで卵管閉塞の原因になることがあります。また、性器クラミジア感染症は子宮内膜炎や子宮頸管炎の原因にもなり、不妊症に影響を与える場合があります。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮以外の場所に子宮内膜が発生・増殖する病気で、女性の約1割に見られる比較的頻度の高い病気です。この病気による組織の癒着や炎症が卵管閉塞を引き起こす場合があります。具体的な原因は解明されていませんが、栄養過多や生理期間の長期化などが影響していると考えられています。
ストレスは関係ある?
ストレスそのものが卵管閉塞の直接的な原因となることはありませんが、ホルモンバランスに影響を与えることで生殖機能に間接的な悪影響を及ぼす可能性があります。
強いストレスは排卵や月経周期の乱れを引き起こすことがあり、これが不妊の一因となる場合もあります。
卵管閉塞の検査・診断方法
卵管閉塞の診断には、以下のような検査が行われます。
子宮卵管造影検査
子宮口から造影剤を注入し、X線撮影を行います。この検査で、子宮や卵管の形状や通過性、卵管采の癒着の有無を確認します。軽度の卵管閉塞の場合、この検査自体が卵管の通りを改善する効果をもたらすことがあります。
卵管通気法・通水法
子宮口から生理食塩水や炭酸ガスを注入し、その拡散状況を確認する検査です。卵管の通過性を確認するために用いられます。
子宮鏡検査・卵管鏡検査
内視鏡を用いて、子宮や卵管の内部を直接観察する検査です。詳細な状況を把握するために有効です。
クラミジア検査
クラミジア感染症が卵管閉塞の原因として疑われる場合、抗原検査や抗体検査を行い感染の有無を確認します。
卵管閉塞の治療
卵管閉塞の治療には以下の方法があります。
薬物療法
クラミジア感染症が卵管閉塞の原因である場合には、抗生剤を使用した薬物療法を行います。この治療は感染の根本的な解消を目的としており、パートナーの方と一緒に検査・治療を受けることをおすすめします。パートナーも同時に治療を行うことで、再感染のリスクを減らすことができます。
手術
検査で卵管采の閉鎖や卵管水腫が確認された場合、腹腔鏡手術が適応となります。特に卵管水腫が見つかった場合、体外授精を行う前に手術を受けることで妊娠率が向上するとの報告があります。
さらに、切開を伴わない治療法として「卵管鏡下卵管形成術」があります。この治療では、卵管鏡を用いて卵管内にバルーンカテーテルを挿入し、バルーンを膨らませて閉塞を解消します。術後の卵管通過性の回復率は約80%と高い一方で、再閉塞のリスクがあるため、妊娠を希望する場合には早めに妊活や不妊治療を進めることが重要です。
体外授精
両側の卵管に閉塞が認められ、他の治療法で改善が見られない場合、体外授精が有効な選択肢となります。
体外授精では、体外で卵子に精子を振りかけて受精させ、その胚(受精卵)を子宮へ移植します。特に難治性のケースでは、顕微鏡下で精子を卵子へ注入する顕微授精を併用することも可能です。当院では、体外授精および顕微授精の両方に対応しています。
卵管閉塞に関するよくある質問
卵管閉塞になっても生理はくるの?
はい、卵管閉塞があっても生理はあります。これは、卵管の状態にかかわらず、子宮や卵巣が正常に機能していれば生理が起こるためです。
そのため、生理があるからといって卵管閉塞がないとは限りません。
卵管閉塞になると自然妊娠できなくなる?
片側の卵管が閉塞している場合、もう一方の卵管が正常であれば自然妊娠は可能です。
しかし、両側の卵管が閉塞している場合は精子と卵子が出会うことができず、自然妊娠が難しくなります。この場合には、治療が必要です。
卵管の通りをよくする方法はある?
卵管閉塞を改善する方法として、「卵管鏡下卵管形成術」があります。この治療では、卵管鏡を用いて卵管内にバルーンカテーテルを挿入し、バルーンを膨らませることで閉塞を解消します。
また、「子宮卵管造影検査」も検査自体が卵管の通りを改善する効果が期待できる場合があります。
卵管が詰まっている人の特徴はありますか?
卵管閉塞にはほとんど自覚症状がありません。そのため、自然妊娠が難しいと感じて検査を受けた際に、初めて発見されることが多いです。
日常生活での明確な兆候が少ないため、不妊が疑われる場合には専門的な検査を受けることをおすすめします。