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体外受精(IVF)

体外授精(IVF)とは?
流れとメリットを解説

体外授精(IVF)とは?流れとメリットを解説体外受精(IVF)とは、採取した卵子と精子を体外(シャーレの中)で受精させ、その受精卵を子宮に戻すことで妊娠を目指す不妊治療です。不妊治療の中でも、最も妊娠率が高い方法の一つです。

「体外」という言葉に抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、体外で行われるのは受精の過程のみであり、受精卵を子宮に戻してからの経過は自然妊娠と変わりありません。
2019年の調査によれば、その年に生まれた赤ちゃんの14人に1人が体外受精による出生であると言われています。体外受精は、現在では一般的な治療法となり、多くのご夫婦が選択されています。

体外受精(IVF)が
推奨されるケース

体外授精が推奨される主なケースをご紹介します。

卵管に障害がある場合

卵管閉塞や癒着が原因で自然妊娠が難しいケースが対象となります。

例として以下が挙げられます
  • クラミジア感染症の既往
  • 子宮内膜症
  • ピックアップ障害

精子の問題がある場合

以下のような男性不妊のケースで体外受精が推奨されます
  • 精子の数が少ない(乏精子症)
  • 精子の運動率が低い(精子無力症)特に重度の場合には、体外受精の中でも顕微授精が必要になることがあります。

免疫に問題がある場合

免疫性不妊症と診断された場合、体外受精が適応となります。これは、女性の免疫系が精子や受精卵を攻撃することで妊娠を妨げるケースを指します。

原因がはっきりしない場合

タイミング法や人工授精を一定回数または一定期間試しても妊娠に至らない場合です。このようなケースでは「機能性不妊」の可能性を考慮し、体外受精が検討されます。

加齢などを理由に
妊娠を急ぐ場合

体外受精(IVF)は、年齢を考慮して妊娠を急ぐ必要がある場合にも推奨されます。
体外受精による妊娠率は、35歳頃から徐々に低下し始め、40歳以上では極端に妊娠率が低下することが知られています。そのため、タイミング法や人工授精を一定期間試みる時間的余裕がない場合や、年齢的リスクを避けたい場合には、早い段階で体外受精を選択することも検討されます。
医師との相談を通じて、患者さまの年齢や状況に合わせた最適な治療スケジュールを決定していきますので、不安なことがあればお気軽にご相談ください。

体外受精(IVF)の
メリットとデメリット

メリット

タイミング法・人工授精より
妊娠しやすい

体外受精は、タイミング法や人工授精と比較して受精および妊娠の成功率が高い治療法です。特に、年齢的な理由で妊娠を急いでいる場合には、有力な選択肢となります。

顕微授精と比べると卵子が
傷つきにくい

体外受精では、精子が自力で卵子の中に入るため、顕微授精のように針を用いて卵子に精子を注入する方法と比べて卵子への負担が少ないと言われています。

卵管・卵巣に問題がある場合も
有効

卵管閉塞や癒着、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの問題がある場合でも、体外受精を用いることで妊娠の可能性が高まります。

抗精子抗体がある場合も
有効

精子を異物として認識し、その運動を妨げる「抗精子抗体」がある場合でも、精子と卵子を体外で受精させる体外受精を用いることで妊娠が可能です。ただし、抗精子抗体の数値が非常に高い場合や、精子の運動能力が大幅に低下している場合には、体外受精ではなく、精子を卵子に直接注入する「顕微授精」が推奨されるケースもあります。

デメリット

採卵時に痛みがある

採卵の際には、卵巣から卵子を取り出すため針を刺す必要があり、チクッとした痛みを感じることがあります。ただし、局所麻酔や静脈麻酔を使用することで、痛みを最小限に抑えることが可能です。

必ず妊娠に至るとは限らない

体外で受精が成功しても、受精卵が必ず子宮内で着床し、妊娠に至るわけではありません。治療の結果を見ながら、夫婦間で、また医師と相談しながら、治療の進め方や期限を検討していくことが重要です。

経済的な負担が大きくなることも

体外受精には健康保険が適用されますが、年齢に応じて治療回数に制限があります。例えば、35歳未満の場合は6回まで、40歳以上の場合は3回までといった制限が設けられています。
ただし、着床が難しい場合や胚移植を繰り返す必要があるケースでは、治療費がかさみ、結果的に経済的な負担が大きくなる可能性があります。
そのため、治療を開始する前に、費用や治療プランについて医師としっかり相談することが大切です。また、必要に応じて助成金制度の利用や、お住まいの地域で適用される支援制度についても確認しておくことをおすすめします。

体外受精(IVF)の
スケジュール・流れ

1卵巣刺激(排卵誘発)

少しでも多くの卵子を成熟させるため、排卵誘発剤の内服や注射で卵巣を刺激します。

  • 月経3日目までに来院いただき、診察や血液検査で問題がなければ、卵巣刺激を開始します。
  • 刺激法はさまざまで、内服薬のみで行う場合や、月経3日目から採卵の2日前まで連日注射を行う場合があります。詳しくは担当医師にご確認ください。
  • 月経8~10日目頃に再度来院し、経腟超音波検査や採血で卵胞の大きさやホルモン値を確認します。その結果に基づいて内服・注射の量を調整します。
  • 卵胞が17mm以上に成長し、ホルモン値が適切であれば、点鼻薬または注射薬で卵子の成熟を促します。

2採卵・採精

採卵は経腟超音波で確認しながら、採卵針を卵胞に刺して卵子を採取します。必要に応じて、局所麻酔または静脈麻酔を選択できます。

  • 局所麻酔:採卵後、早めに帰宅したい方向け
  • 静脈麻酔:痛みに弱い方や、眠っている間に治療を終えたい方向け

採卵後は休んでいただき、出血などの異常がなければご帰宅いただけます。
男性側の精液は、採卵当日に持参していただきます。

3媒精

採取した卵子と、精製した精子を用いて受精を行います。

  • 体外授精:シャーレの中で卵子に精子を振りかけ、自然に受精させます。
  • 顕微授精:極細のガラス管(マイクロピペット)で精子を卵子内に注入し、受精を促します。

4胚培養

受精卵 (胚)は、培養器と培養液の中で厳重に管理されながら、2~7日間培養されます。
採卵後に卵巣が腫れている場合や、移植が難しい場合は、胚を凍結保存することもあります。

5胚移植

培養した受精卵(胚)を子宮内に戻します。
超音波で確認しながらカテーテルを用いて移植を行い、施術は数分で終わります。痛みはほとんどなく、問題がなければすぐに帰宅できます。
当日は激しい運動を控え、安静に過ごしてください。翌日から通常の生活が可能です。

6ホルモン補充

子宮内膜を厚くして着床をサポートするため、ホルモン剤を使用します。医師の指示に従い、適切に使用してください。

7妊娠の判定

胚移植後、12日目前後に妊娠の判定を行います。血液検査でhCGホルモンの値を測定し、妊娠の成立を確認します。

当院の体外受精の費用について

項目 治療内容   保険
(3割負担)
税抜 自費 (税込)
診察料 初診料   ¥870 ¥2,900 ¥3,190
再診料   ¥230 ¥750 ¥825
管理料 一般不妊治療管理料 (3月に1回)   ¥750 ¥2,500 ¥2,750
生殖補助医療治療管理料 (月1回)   ¥900 ¥3,000 ¥3,300
婦人科特定疾患治療管理料 (3月に1回)   ¥750 ¥2,500 ¥2,750
処置料 超音波検査 (1回目)   ¥1,590 ¥1,500 ¥1,650
超音波検査 (2回目以降)   ¥1,430 ¥1,500 ¥1,650
人工授精   ¥5,460 ¥18,200 ¥20,020
採卵 採卵 (基本料 9600円)(採卵個数ごとに加算) 0個 ¥9,600 ¥32,000 ¥35,200
1個 ¥7,200 ¥24,000 ¥26,400
2~5個 ¥10,800 ¥36,000 ¥39,600
6~9個 ¥16,500 ¥55,000 ¥60,500
10個以上 ¥21,600 ¥72,000 ¥79,200
受精 体外受精(IVF)   ¥12,600 ¥42,000 ¥46,200
顕微受精 (ICSI) 1個 ¥14,400 ¥48,000 ¥52,800
2~5個 ¥20,400 ¥68,000 ¥74,800
6~9個 ¥30,000 ¥100,000 ¥110,000
10個以上 ¥38,400 ¥128,000 ¥140,800
新鮮精子加算 ¥3,000 ¥10,000 ¥11,000
採取精子調整加算 (精巣内精子採取術によって採取された精子)   ¥15,000 ¥50,000 ¥55,000
卵子活性化処理(顕微受精において必要な場合)   ¥3,000 ¥10,000 ¥11,000
胚培養・凍結 受精卵培養 (受精した個数) 1個 ¥13,500 ¥45,000 ¥49,500
2~5個 ¥18,000 ¥60,000 ¥66,000
6~9個 ¥25,200 ¥84,000 ¥92,400
10個以上 ¥31,500 ¥105,000 ¥115,500
タイムラプス (先進医療)     ¥30,000 ¥33,000
胚盤胞加算 (胚盤胞培養個数) 1個 ¥4,500 ¥15,000 ¥16,500
2~5個 ¥6,000 ¥20,000 ¥22,000
6~9個 ¥7,500 ¥25,000 ¥27,500
10個以上 ¥9,000 ¥30,000 ¥33,000
胚凍結保存 1個 ¥15,000 ¥50,000 ¥55,000
2~5個 ¥21,000 ¥70,000 ¥77,000
6~9個 ¥30,600 ¥102,000 ¥112,200
10個以上 ¥39,000 ¥130,000 ¥143,000
胚凍結保存維持管理料 (凍結から1年経過後、年1回)   ¥10,500 ¥35,000 ¥38,500
胚移植 新鮮胚移植   ¥22,500 ¥75,000 ¥82,500
融解胚移植   ¥36,000 ¥120,000 ¥132,000
アシステッドハッチング(AHA)   ¥3,000 ¥10,000 ¥11,000
高濃度ヒアルロン酸含有培養液添加   ¥3,000 ¥10,000 ¥11,000
子宮内膜スクラッチ (先進医療)     ¥20,000 ¥22,000
SEET法 (先進医療)   - ¥40,000 ¥44,000
  2段階胚移植術 (新鮮) (先進医療)     ¥75,000 ¥82,500
  2段階胚移植術 (凍結) (先進医療)     ¥120,000 ¥132,000
卵子・精子凍結 精子凍結   ¥4,500 ¥15,000 ¥16,500
精子凍結保存維持 (凍結から1年経過後、年1回)     ¥20,000 ¥22,000
卵子凍結     ¥50,000 ¥55,000
卵子凍結保存維持 (凍結から1年経過後、年1回)   - ¥35,000 ¥38,500
卵子融解 卵子融解     ¥45,000 ¥49,500
凍結(胚・精子・卵子)の移送 持込代(胚・配偶子それぞれにつき)   - ¥35,000 ¥38,500
持出代(胚・配偶子それぞれにつき)   - ¥10,000 ¥11,000

体外受精に関するよくある質問

体外受精の成功率はどれくらいですか?

日本産婦人科学会の調査によると、胚移植1回あたりの妊娠率は33.9%、出生率は13.1%です。成功率は患者さまの年齢や体調、治療方法によっても異なります。

体外受精はハイリスクですか?

母体へのリスクという観点では、治療方法よりも出産年齢の方が大きな影響を与えます。体外授精だからといって特別に母体への負担が大きいわけではありませんが、採卵やホルモン治療に伴う副作用などが生じる場合があります。医師と相談しながらリスクを適切に管理します。

体外受精は痛いですか?

卵胞に針を刺して卵子を採取する「採卵」の際には、チクッとした痛みを感じることがあります。ただし、必要に応じて局所麻酔静脈麻酔を使用しますので、痛みをほとんど感じずに採卵を終えることが可能です。

体外受精は何回目で妊娠するのが一般的ですか?

体外授精で妊娠が成立した人の平均胚移植回数は約2回です。

  • 34歳までの場合:胚移植3回目までに約80%が妊娠
  • 35~39歳の場合:胚移植4回目までに約75%が妊娠
  • 40歳以上の場合:複数回の胚移植が必要になることが多いです。
妊娠の可能性は年齢や治療状況に大きく左右されるため、医師と相談しながら進めていきましょう。