卵巣刺激法(排卵誘発法)とは?
卵巣刺激法(排卵誘発法)は、質の良い卵子を複数確保するために、排卵誘発剤を用いて卵巣を刺激する治療法です。
通常、女性の体内では1カ月に1つの卵子が排卵されますが、卵巣刺激を行うことで1カ月に複数個の卵子を採取することが可能になります。
タイミング法・人工授精 | 通常、1つの卵子による妊娠を目指します。 |
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体外受精 | 複数の卵子を採取し妊娠率を高めるために、卵巣刺激法が行われます。 |
排卵誘発剤は内服または注射で投与され、患者さまの体質や治療方針に合わせて使用されます。
卵巣刺激法の選び方と
メリット・デメリット
体外受精(IVF)における卵巣刺激法は、患者さまの体質、治療歴、卵巣予備能(AMH値)に基づいて選択されます。
以下では、低刺激法と高刺激法の特徴や適した方についてご紹介します。
低刺激法(自然周期・クロミフェン自然周期・レトロゾール自然周期)
低刺激法は、体に優しく自然に近い形で卵胞を育てる方法です。少量の薬剤を用い、1~3個の卵子を目指します。
メリット
- 身体への負担が少なく、安全性が高い
- 副作用や体調不良のリスクが低い
- 卵巣予備能が低い方や高齢の方に適している
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが少ない
デメリット
- 採卵できる卵子数が少なく、1回での妊娠率がやや低め
- 採卵日程の調整が難しい場合がある
おすすめの方
- AMH値が低く、卵巣予備能が限られている方
- 高齢で薬剤の影響が気になる方
- 初めて体外受精を受ける方や身体への負担を抑えたい方
高刺激法(PPOS法・ショート法・ロング法・アンタゴニスト法)
高刺激法では、卵巣を積極的に刺激して複数の卵胞を育て、10個以上の卵子を採卵することを目標とします。この方法は、排卵誘発剤を用いて卵巣を強力に刺激することで、一度の採卵で妊娠の可能性を最大化することを目指します。
メリット
- 一度に多くの卵子を採卵できるため、妊娠の可能性を高める。
- 採卵後の胚凍結によって複数回の移植が可能になるため、次回以降の治療負担を軽減できる。
- 採卵日程が調整しやすいため、仕事やライフスタイルに合わせやすい。
デメリット
- 身体への負担が大きい:排卵誘発剤の使用量が多いため、薬剤の副作用や体調不良を感じることがある。
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク:特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方では注意が必要。
- 通院回数が増えるため、時間的な負担が大きくなる。
おすすめの方
- 比較的若く、AMH値が高い方:卵巣予備能が十分あり、多くの卵子が採卵できる可能性が高い。
- 一度に複数の胚を凍結して将来に備えたい方:妊娠のタイミングを計画的に進められる。
- 短期間で結果を望む方:仕事やライフイベントとの両立を考慮し、早く治療を進めたい場合に適しています。
当クリニックの推奨
当クリニックでは、患者さま一人ひとりの体質やご希望に合わせた最適な卵巣刺激法をご提案しています。治療方針は、超音波検査や血液検査の結果を基に、専門医が丁寧に診断し、オーダーメイドの治療プランを作成します。
卵巣予備能が低い方や高齢の方には、身体への負担を軽減しながら妊娠を目指せる「低刺激法」を推奨。
若い方や、将来的に多くの胚を凍結保存したい方には、一度に多くの卵子を採卵できる「高刺激法」がおすすめです。
卵巣刺激法に迷われる場合や、治療方針についての不安がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。患者さまが安心して治療を受けられるよう、全力でサポートいたします。
卵巣刺激法の
治療中の食事・生活
卵巣刺激法を行う際には、妊娠率を高める食事や生活習慣を取り入れることが大切です。これは、卵巣刺激法を行っていない方にも役立つアドバイスですので、ぜひご参考ください。
食事
現代の日本人はタンパク質が不足しがちです。良質なタンパク質は、健康な体づくりと妊娠率の向上に役立ちます。
- 大豆製品(豆腐・納豆)
- 卵
- 赤身肉(豚・牛)
- 赤身の魚(カツオ・マグロ)
糖質を摂り過ぎない
糖質の摂り過ぎは、タンパク質の劣化(糖化)を招き、老化や卵巣機能低下につながることがあります。
ただし、極端な糖質制限はNGです。炭水化物(糖質・食物繊維)、タンパク質、脂質をバランスよく摂るように心がけましょう。
良質なコレステロールを摂る
良質なコレステロールは女性ホルモンや細胞膜の材料となり、妊娠率の向上に役立ちます。
- 卵黄
- 豚レバー
その他の大切な栄養素
ビタミンD | 免疫力を高めます。 |
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鉄分 | 子宮内膜の形成や赤血球の材料になります。 |
葉酸 | 胎児の神経や脳の発達をサポートします。 |
亜鉛 | 細胞分裂を促進します。 |
生活
卵巣刺激法を行う際、妊娠率を高めるために生活習慣の見直しが重要です。以下に、特に気を付けたいポイントを挙げます。
適度な運動
適度な運動は、血流を改善し、健康維持や卵巣機能の向上に役立ちます。おすすめの運動は以下の通りです:
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- ヨガ
- 登山
運動は無理なく楽しみながら続けられるものを選びましょう。ただし、疲れ切ってしまうような過度の運動やストレスを感じる運動は、かえって妊娠率を低下させることがあります。
十分・良質な睡眠
適切な睡眠時間を確保することは、ホルモンバランスの調整に大切です。一般的には1日7時間程度の睡眠が推奨されます。
- 日中の適度な活動や規則正しい生活を心がけましょう。
- 寝室環境の調整(暗く静かで快適な温度)やベッドの見直しも、睡眠の質を高めるために有効です。
睡眠中には、女性ホルモンの分泌を調整する成長ホルモンが多く分泌されます。質の高い睡眠を心がけましょう。
ストレスの解消
ストレスはホルモンバランスを乱し、妊娠の妨げになることがあります。仕事やプライベートでのストレスは小まめに解消し、溜め込まないようにしましょう。
- 趣味を楽しむ
- 軽い運動を取り入れる
- リラックスタイムを設ける
- 友人や家族と話す
自分に合った方法でストレス解消を心がけてください。
身体を温める
冷えは血行不良を引き起こし、卵巣機能を低下させる可能性があります。以下のような方法で身体を温める習慣をつけましょう:
- 運動で基礎代謝をアップさせる
- 入浴(シャワーではなく湯船に浸かる)
- 冬場や冷房対策として適切な衣類を着用する
- 漢方や鍼灸も、血流改善に役立つ場合があります
身体を冷やさない工夫を取り入れ、血流を良く保つことが妊娠率向上につながります。
卵巣刺激法に関する
よくある質問
卵巣刺激法は痛いですか?
高刺激法を選択した場合、排卵誘発剤の影響で卵巣が過剰に反応し、採卵の前後に下腹部に痛みや違和感を感じることがあります。
一方、低刺激法の場合は、卵巣への負担が少ないため、ほとんど痛みを心配する必要はありません。
卵巣刺激法の直後、気をつけることはありますか?
出血がなければ、当日はシャワー程度に留めると良いでしょう。入浴は翌日以降がおすすめです。
食事や飲み物に特別な制限はありませんが、過度な飲酒や身体を冷やす行動は避けてください。
状態に応じて個別に指導を行いますので、不安があれば医師やスタッフにご相談ください。
卵巣刺激法の治療後、仕事に行っても大丈夫ですか?
当日は体調が良ければ通常通り仕事をしていただけますが、誘発剤の影響で体調が優れない場合もあるため、事前にお休みをとることをおすすめします。
翌日以降は、基本的に通常の生活や仕事に戻ることが可能です。
性交渉はしても大丈夫ですか?
医師の指示に従ってください。
一般的に、卵胞が十分に育つまでは性交渉を控えるよう指導されることが多いです。治療スケジュールに応じて適切なタイミングについて医師と相談しましょう。